【iDeCo】出口戦略のポイント解説!一時金と年金形式の選び方、税負担を抑える方法とは?

iDeCo

iDeCoの運用商品や節税効果などは多く語られるものの、いざ受け取るのはまだまだ先だからと、出口戦略を軽視してはいませんでしょうか。

受け取り方によって、税制優遇がかなり違ってきますし、ポイントを押さえておくことによって、今後の税制改正などへのアンテナを張ることができるかもしれません。

せっかく定年まで強制的にホールドした運用商品の運用益に、税金が引かれたら手取りが減ってしまうのでもったいないですよね!

そこで、今回はその受け取り方のポイントと税負担を抑える方法をご紹介します。

iDeCoの概要や仕組みを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください!


一時金と年金形式のどちらが有利か?

iDeCoの受け取り方法は、一時金、年金形式、またはその併用の3種類です。

一時金の特徴

  • 一括で全額を受け取れるので、大きな支出(住宅ローンの返済や子供の教育資金)に対応しやすいです。
  • 退職所得控除が適用されるため、加入期間が長いほど税負担が軽減されます。

年金形式の特徴

  • 少額ずつ分割して受け取るため、公的年金等控除の範囲内で非課税になる可能性が高いです。
  • 後述しますが、受取頻度の選択も可能なため、老後の生活費として計画的に使いやすいと思います。

併用の特徴

  • 一部を一時金として受け取り、残りを年金形式にすることで、控除を分散させつつ現金の必要額を確保する戦略が取れます。

比較表

項目一時金年金形式併用
受取方法一括で受け取る分割で受け取る一時金と分割の両方
課税対象退職所得控除が適用公的年金等控除が適用退職所得控除 + 公的年金等控除の両方が適用
メリットまとまった資金を確保できる税負担を抑えながら長期間受け取れる控除を最大限活用しながら柔軟に受け取れる
デメリット税負担が退職金と合算されると増える可能性あり他の収入と合算され課税対象が増える場合あり計画を立てないと税負担が大きくなる可能性あり

退職金との併用での課税負担

退職金との合算ルール

  • 退職所得控除は一度の受け取りに適用されるため、企業退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると企業退職金 + iDeCoの一時金の合計額が対象となるため、控除額が足りず課税が発生する場合があります。
  • 企業退職金は勤続年数、iDeCoは加入年数に基づいて計算されます。(以降、どちらも勤続年数と表記します)
  • 企業退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取る場合、退職所得控除の計算はより勤続年数が長い方が優先されます。つまり、ひとつの会社に30年勤めており、iDeCoは15年間の加入期間であれば30年のほうで退職所得控除額の算出が行われます。

退職所得控除の算出方法

  1. 勤続年数が20年以内の場合
    • 退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数
      • 勤続年数が1年未満の場合は、切り上げて1年とします。
      • 上限は800万円(20年 × 40万円)
  2. 勤続年数が20年を超える場合
    • 退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)
      • 20年までの部分で800万円、21年目以降は1年ごとに70万円が加算されます。

具体例

項目退職金のみ受け取り退職金とiDeCo一時金を同時受け取り
退職所得控除額800万円(勤続年数 = 20年)1500万円(勤続年数 = 30年)
受取額(退職金+iDeCo)1000万円1200万円
課税対象額1000万円 – 800万円 = 200万円1200万円 – 1500万円 = -300万円
課税所得額200万円 × 1/2 = 100万円
所得税額100万円 × 5% = 5万円
復興特別所得税5万円 + (5万円 × 2.1%) = 5.105万円
住民税額100万円 × 10% = 10万円
最終課税額5.105万円 + 10万円 = 15.105万円課税されません

所得税額の計算は、累進税率に基づいて課税所得額に応じた税率を適用します。

国税庁のこちらのページに詳しく掲載されています。

XX年ルールの活用

  • 2024年までは5年ルールでしたが、2025年税制改正で10年ルールに変更されるようです。
  • iDeCoの受取を先にもらい、企業退職金を10年以上離すことで、それぞれの退職所得控除を別々に適用可能になるというルールです。つまり、iDeCoの受取最短年齢の60歳で受け取った場合、70歳未満で企業退職金を受け取ると退職所得控除がリセットされず、金額が合算されたうえで計算されてしまう、ということです。
  • 裏を返せば、iDeCoを60歳で受け取り、70歳で企業退職金を受け取る場合は、退職所得控除の恩恵を二度受けることができ、大きな税制優遇となります。
  • 逆に、企業退職金を先にもらいiDeCoの受取を後にする場合は、19年ルールが適用されます。iDeCoを先に受け取る場合と期間はほぼ倍も離れており、実質退職所得控除を受けさせる気がないのではないかと邪推してしまうほどです。

なんでこんなに複雑なの~?!


年金形式の受取期間・受取年齢と頻度の選択

受取期間・受取年齢の設定

  • 現行制度では受取期間は「最短5年~最長20年まで」で、受取年齢は「最短60歳~最長75歳まで」。2025年の税制改正で80歳まで延長の可能性があります。
  • 極端な例ですが、一番若く最短の場合、60歳~65歳で受け取り完了にできますし、健康で長生きする自信があれば、75歳~95歳(80歳に延長されれば、80歳~100歳)まで受け取ることを選択してもOKということです。

頻度の選択

受取頻度メリットデメリット
毎月生活費として使いやすい管理が煩雑になる場合がある
半年ごと大きな出費にも対応可能資金計画がやや難しい
年1回管理がシンプルで運用益が期待できる資金のタイミングに注意が必要

課税対象額を最小化する方法

年間受取額の調整

  • 年間受取額が公的年金等控除額の範囲内であれば非課税に。以下は年齢別の控除額の例です。
年齢年間公的年金等の収入額公的年金等控除額
65歳未満60万円以下60万円
60万円超~130万円以下60万円 + (収入額 – 60万円) × 25%
130万円超110万円
65歳以上110万円以下110万円
110万円超~410万円以下110万円 + (収入額 – 110万円) × 25%
410万円超~770万円以下195万円 + (収入額 – 410万円) × 15%
770万円超235万5000円
  • iDeCoの年金受取額と老齢年金の合算額が上表に当てはまるので、老齢厚生年金ももらえる会社員であれば、非課税になることはほぼないと思います。

配偶者や家族への影響

  • 例えば夫婦揃ってiDeCoに加入しており、どちらかに配偶者控除や扶養控除が適用されている場合、iDeCo受け取りで所得が増えると控除対象から外れる可能性があります。
  • 扶養の範囲内(年収103万円以下)に抑えるために、受取額や頻度を調整することで回避することも可能です。

運用益の影響

  • 年金形式での分割期間中も運用が続き、資産が増える可能性があります。ただし、元本割れのリスクがある商品を選ぶ場合は注意が必要です。

制度変更の影響

  • 2025年度以降、受給開始年齢が80歳まで延長される可能性があります。
  • 制度変更に応じた受取計画の見直しが必要です。

まとめ

iDeCoの出口戦略は、一時金、年金形式、併用かの選択、受取時期・受取年齢や期間、控除の活用によって税負担が大きく変わります。シミュレーションや専門家への相談を活用して、最適な戦略を立てましょう。

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