私は地震専門家でも学者でもないですが、ひとりの日本人として、生きている間に必ず起きるであろう大災害に向けて、少しでも知識をつけて正しく恐れようという思いから、この記事を執筆しています。
不安を煽りたいわけではなく、ただ事実を伝え、未来への備えのきっかけ作りになれば幸いです。
日本は地震大国として知られていますが、中でも特に注目されているのが南海トラフ地震と首都直下型地震です。
この2つの地震は、それぞれ異なる特徴を持ち、甚大な被害をもたらす可能性があります。
本記事では、これらの地震の特徴、歴史、そして最新の予測について解説します。
海底の地形
海溝(かいこう)
海底に細長く伸びる、深い谷のような地形をしており、水深6,000m以上のものを海溝と呼びます。
- 日本海溝: 8,058m
- マリアナ海溝: 10,920m
プレートの沈み込みによって巨大地震(海溝型地震)や津波が発生する場所でもあります。
海嶺(かいれい)
海底にある山脈のようなもので、急な斜面に囲まれた細長い形をしています。
地下のマグマが上昇して固まることで形成される仕組みになっており、海底火山が連なっています。
ここでは、新しい地殻が次々と作られています。
- 大西洋中央海嶺
- 東太平洋海嶺
トラフ
海溝と同じ海底に細長く伸びる、深い谷のような地形を言いますが、トラフは水深が6,000m未満のものを指します。
トラフは海溝に比べて幅が広く、両側の傾斜もなだらかです。舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)とも呼ばれます。
- 南海トラフ
- 相模トラフ
南海トラフ地震とは?
南海トラフ地震は、太平洋側の南海トラフで発生する海溝型地震です。
ここでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことでエネルギーが蓄積され、巨大地震が引き起こされます。
南海トラフ地震という名前ですが、南海地震、東南海地震、東海地震の3つの地震が連動して起こる、連動型巨大地震として知られています。
地震名 | 主な震源域 | 主な被害地域 | 備考 |
---|---|---|---|
東海地震 | 静岡県沖〜伊豆半島沖 | 静岡、愛知など東海地方 | 富士山周辺や東海地方に大きな被害を及ぼす可能性 |
東南海地震 | 三重県沖〜愛知県沖 | 愛知、三重、岐阜など中部地方 | 南海地震と連動することが多い |
南海地震 | 和歌山県沖〜四国沖〜九州南部沖 | 和歌山、四国、九州南部 | 高知県や徳島県などで津波被害が大きい |
特徴
- 規模: マグニチュード8~9クラスの巨大地震
- 周期性: 約100~150年ごとに発生
- 津波: 大規模な津波が発生し、沿岸部に甚大な被害をもたらす
- 広範囲への影響: 東海地方から九州に至る広い地域に被害を与える
歴史
過去の南海トラフ地震として以下が記録されています。
安政東海地震(1854年)の際には、その32時間後に安政南海地震(1854年)が発生し、昭和東南海地震(1944年)の際には、2年後に昭和南海地震(1946年)が発生するなど、その時間差にも幅があることが知られています。
最新の予測
現在、南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70%~80%とされています。特に、プレート間の異常な歪みやスロースリップ現象が観測されると、「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、警戒が呼びかけられます。
2024年8月8日に初めての「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、1週間後には呼びかけが解除されました。
2025年1月13日にも日向灘を震源域とするマグニチュード6.9の地震があり、「南海トラフ地震臨時情報」が発表されましたが、翌日14日には大規模地震の発生の可能性は高まっていない、ということで調査終了の発表が出されました。
スロースリップ現象とは?
- 地震活動やプレートの動きに関連する現象で、断層面がゆっくりと滑る現象
- 通常の地震のように短い時間で断層が急激に動くのではなく、数日から数週間、場合によっては数ヶ月かけてじわじわと動く
- 通常の地震のような強い揺れは発生しない
首都直下型地震とは?
首都直下型地震は、東京を中心とした首都圏で発生する内陸型地震です。
関東地方の活断層や地殻の歪みによって発生し、震源が浅いため非常に強い揺れが局所的に発生します。
1923年に起きた関東大震災は、首都直下地震ではなく相模トラフを震源とする海溝型地震でした。マグニチュード7.9で、火災や津波を伴い、約14万人の犠牲者を出したとされます。
特徴
- 規模: マグニチュード7前後
- 被害: 建物の倒壊や火災が発生しやすい
- 津波: 原則として発生しない
歴史
- 1855年 安政江戸地震: 江戸(現在の東京)を直撃し、多くの建物が倒壊
- 1894年 明治東京地震: 東京の下町と横浜市、川崎市を中心に被害をもたらした
最新の予測
政府の想定では、首都直下型地震が発生した場合、経済損失は約95兆円に達する可能性があります。
防災科学技術研究所は、震源断層の位置や地震動の特性を研究し続けていますが、発生日時を特定することは現状困難です。
経済損失と影響
南海トラフ地震の経済影響
- 想定される経済損失: 約171兆円(出典: 国土交通省 防災・減災、国土強靱化)
- 被害を受ける主な業種
- 製造業: 工場の停止、サプライチェーンの寸断
- 物流: 津波や道路の損壊による輸送機能の停止
- 観光業: 沿岸地域の観光地が津波で壊滅的被害を受ける可能性
- 被害を受ける主な業種
首都直下型地震の経済影響
- 想定される経済損失: 約95兆円(出典: 内閣府 首都直下地震の被害想定と対策について)
- 被害を受ける主なサービス
- 通信インフラ: インターネットや電話網の途絶
- 金融機関: 都市部の銀行や証券会社の機能停止
- 商業施設: 建物倒壊や火災により営業停止
- 被害を受ける主なサービス
未来予測と信憑性
南海トラフ地震と首都直下型地震は、発生メカニズムが異なるため予測の難易度にも差があります。
南海トラフ地震
- 長期的な発生確率は高い信憑性を持っていますが、具体的な発生日時を予測することは困難です。
- 異常現象が観測された際の臨時情報が、発生のヒントになる場合があります。気象庁の情報をよく確認しておきましょう。
首都直下型地震
- 発生する可能性は高いとされていますが、断層の動きが予測しにくく、短期的な予測はほぼ不可能とされています。
私たちにできる備え
南海トラフ地震や首都直下型地震のような巨大地震に備えるためには、日頃からの対策が必要です。
- 家庭での備蓄: 食料や水、生活必需品を最低3日分、可能であれば1週間分準備
- 家具の固定:家具や家電を固定し、揺れによる転倒を防ぐ
- 避難経路の確認:家族と避難場所や連絡方法を話し合っておく
- 情報収集:気象庁や自治体の防災情報を常に確認
- 地域コミュニティとの連携:地域の防災訓練に参加し、近隣との協力体制を築く
まとめ
南海トラフ地震と首都直下型地震は、どちらも私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。
最新の科学技術による予測が進む中、私たち自身も防災意識を高め、具体的な備えを進めることが重要です。
また、震災後の経済的影響や復興の流れを理解し、必要な準備を進めることで、被害を最小限に抑えることができます。
「自分の命を守る・家族の命を守る」ことを最優先に、家族や地域で防災対策を見直してみましょう。
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